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00:00深い海の中、暗く冷たい世界は、私たちの想像を超えるような生き物の宝庫です。
00:20この世界に君臨する巨大生物たち、そして捕食者たちがいます。
00:41彼らの狩りは独特です。
00:50その姿は、時に神話や伝説となって語られてきました。
01:02最新の研究成果をもとに、貴重な映像とCGを駆使して、これまで伝えられてこなかった深い海のモンスターたちの生態を2回連続でお届けします。
01:20今回取り上げるのは、海の殺し屋、捕食者たち。
01:41赤い光を発し、それをサーチライトのように使って、獲物を探すんです。
01:47古代の海の巨大爬虫類。
01:51大型魚類の祖先。
01:56お見事。
01:57なぜ深い海の中で、こうしたモンスターが生まれるのでしょうか。
02:03地球上に存在する恐ろしい捕食者たち。
02:21その多くは、海面の遥か下にいるため、姿を目にすることは稀です。
02:27果てしない暗闇が続く海を探索するのは、極めて困難だからです。
02:37そこで生き抜く生物たちの姿は、地上とはまるで異なります。
02:43この世界の住人たちの中には、絶対に遭遇したくない、そう思われている魚がいます。
02:57蝶鎮アンコウです。
03:06巨大な口と鋭い歯を持つ、深海を代表する凶暴な捕食者です。
03:12蝶鎮アンコウが生きているのは、深い時には水深2000メートルの闇の中。
03:24獲物に偶然出会うことは稀です。
03:27では、どうやって見つけるのでしょうか。
03:32答えは、自ら光を発する能力にあります。
03:36生物発光と呼ばれ、生物の体内で起こる化学反応によって光が生み出されます。
03:59陸上の生物には珍しい能力ですが、
04:02深海ではなんと9割の生物がこの力を持つと言われています。
04:13蝶鎮アンコウは、生物発光を狩りに生かします。
04:18光るのは、額の先から伸びる細い背びれの先端。
04:22素早く泳げるような体つきではありませんが、作戦があります。
04:36背びれの先端を釣竿のように揺らして、
04:39暗闇の中で獲物を引き寄せるのです。
04:42しかし、蝶鎮アンコウの狩りの瞬間が目撃されたことはほとんどありません。
04:58生息しているのがあまりにも深い海だからです。
05:02海の生物の大半は、水深200メートルより浅い氷層の海域、
05:17サンライトゾーンに生息しています。
05:20太陽の光が注ぐ、暖かく明るい環境です。
05:24その下には、トワイライトゾーンという領域があり、
05:30光はほとんど届かなくなります。
05:34さらに下、水深1000メートルから4000メートルが、
05:39光の全く届かない闇の領域、ミッドナイトゾーンです。
05:47では、蝶鎮アンコウはこの暗闇の中で、
05:50何を獲物にしているのでしょうか。
05:54答えは、ロンドン自然史博物館に収められた、
06:01膨大な標本の中に見つかりました。
06:08これは極めて貴重な、蝶鎮アンコウの標本です。
06:16アンコウの典型的な特徴がよくわかりますね。
06:20まず、目がとても小さいことです。
06:23そして、蝶鎮にあたる、いわゆるギジエ。
06:29ここに光を放つバクテリアが住んでいて、
06:32その光で獲物を引き寄せます。
06:34口には鋭い歯がびっしりと生えています。
06:39さらに、上顎と喉の奥にも小さな歯が並んでいるので、
06:44一度捕まった獲物が逃げられる可能性はほとんどありません。
06:48この標本で特に興味深いのは、胃に大きな獲物が入っていることです。
06:56蝶鎮アンコウの胃には伸縮性があり、かなりのサイズでも飲み込めます。
07:01触ると大きな塊があるのがわかりますね。
07:04ちょっと気になります。
07:08貴重な標本を解剖せずに分析するため、館内の研究室へ運びます。
07:23CTスキャンにかけ、何千枚ものX線画像を撮影します。
07:28画像から、蝶鎮アンコウの精密なCGモデルと骨格標本を作ります。
07:45素晴らしい。
07:47鮮明に映し出されています。
07:49蝶鎮アンコウの胃の中ですね。
07:51少し回すと、顎だけでなく、喉の奥の上側にも歯があるのがわかるはずです。
08:00ああ、ここにありますね。
08:03恐ろしい牙のようです。
08:09蝶鎮アンコウが獲物を捕らえるときは、通常、頭を狙います。
08:14噛みついて呼吸を止めるんです。
08:17獲物が生き絶えて動かなくなれば、飲み込みやすいですから。
08:21大きな目を持った獲物からすれば、暗闇の中、疑似絵の光が目についた。
08:31それで興味を持って近づいたら、突然飲み込まれてしまうというわけです。
08:39腹を透かした蝶鎮アンコウは、深海の暗闇の中でじっと息を潜めています。
08:46待ち伏せ型の捕食者である蝶鎮アンコウは、いつでも獲物を仕留められるよう備えています。
08:58深海では、暗闇よりもむしろこの光を恐れなくてはならないのです。
09:23CTスキャンの結果から、食べた魚をほぼ特定することができました。
09:37まず分かったのは、2つの大きなヒレです。
09:41体の後方に同じくらいの大きさのヒレが上下についています。
09:47これは、セキトリイワシというグループの特徴です。
09:50胃の中の魚は、おそらく、ホソウセキトリイワシでしょう。
09:58自然史博物館の膨大なコレクションなら、この魚も見つかるかなと思い調べたところ、ありました。
10:06これが、ホソウセキトリイワシの標本です。
10:10取り出してみましょう。
10:12慎重に。
10:12アンコウの標本の胃の中の魚も、似たようなサイズでしょう。
10:22チョウチンアンコウは、自分の体調の2倍もある獲物を飲み込んだのです。
10:28なんというか、まるで人間がセントバーナードを丸飲みするような感じですかね。
10:33それほど、チョウチンアンコウの胃袋は、伸縮性に富んでいるということです。
10:41狩りのチャンスが限られている深海では、1回で取れる限りのエネルギーを確保するのです。
10:49この獲物一つで、おそらく数週間はしのぐことができたでしょう。
10:55海には、数え切れないほどの捕食者が生息しています。
11:10独特な狩りの技を発達させたチョウチンアンコウから、
11:16強力な毒を利用するものまで、
11:18食物連鎖で上位に位置するホホジロザメの攻撃は、
11:26カミツキ型です。
11:29すべてのカミツキ型捕食者は、
11:32殺しの本能を、
11:33いにしえのある生物から受け継いでいます。
11:374億1900万年前、
11:50大地には植物が増え始めました。
11:54恐竜はまだ登場していませんが、
11:57海はすでに生命であふれていました。
12:00それは、魚類の時代と呼ばれた時期でした。
12:08当時、大型の捕食者はまだ存在していませんでした。
12:17しかし、進化は急速に進みます。
12:24そして現れたのが、
12:26バンピ類と呼ばれる魚です。
12:28地球上で初めて、
12:30頑丈な顎骨を持ち、
12:33大きく口を開け閉めすることができる生物でした。
12:38彼らの登場で、
12:40海の生態系は大きく変わることになります。
12:47顎の発達は極めて重要でした。
12:50そのおかげで、
12:51魚たちは、
12:52ただ餌を吸い込むだけではなく、
12:55獲物を積極的に仕留めることができるようになった。
12:58バンピ類は、
13:00バンピ類は顎の骨を発達させただけではありません。
13:06敵の攻撃を防ぐため、
13:08頭部から胴体にかけ、
13:10頑丈な板状の骨、
13:12骨盤で覆われるようになったのです。
13:15顎と骨盤は、
13:19さらに進化していきました。
13:22そして、
13:22およそ3億8200万年前、
13:26最大で最強の捕食者が現れます。
13:30ダンクル・オステウスです。
13:33ダンクル・オステウスの全長は、
13:36推定で最大10メートル。
13:38当時の生態系の頂点に君臨した、
13:42巨大なバンピ類です。
13:47ダンクル・オステウスの化石は、
13:49ごくわずかしか見つかっていません。
13:52完全な頭蓋骨は、
13:54ほとんどが北アメリカの
13:56五大湖周辺で発見されています。
14:04ダンクル・オステウスの化石を研究しているのが、
14:08古生物学者のセバスティアン・オリーブです。
14:15分析には、
14:16頭蓋骨のレプリカを用います。
14:19これがダンクル・オステウスです。
14:23かなりの大きさがあります。
14:25頭蓋骨がこの部分です。
14:27その後ろに胴体があります。
14:30頭と胴体は、
14:32強力な筋肉でつながっていました。
14:36口は筋肉の収縮により、
14:39非常に大きく開きました。
14:43上下の顎骨の先端は、
14:46歯のように尖っていました。
14:49それが鋭いナイフのように機能していたんです。
14:53噛む力も極めて強く、
14:56そのおかげで、
14:57獲物を確実に捕らえることができたわけです。
15:02植物連鎖の頂点にいたダンクル・オステウスは、
15:05他のバンピルイも獲物にしていたでしょう。
15:14つまり、その顎は、
15:16相手の硬い骨を噛み砕くほど強力だったわけです。
15:22現代で言えば、
15:23サメがウミガメの甲羅を砕くようなものです。
15:27強力な顎を持った捕食者は、
15:37太古の海にもいたのです。
15:39では、そのパワーはどれほどだったのでしょう。
15:42ダンクル・オステウスの頭蓋骨の
15:48精密なCGモデルを作成しました。
15:53これを使い、
15:54彼らがどうやって獲物を仕留めていたのかを
15:57解き明かそうというのです。
16:03ダンクル・オステウスのかむ力を検証するのは、
16:06進化生物学者のマーティン・ブラゾーです。
16:12これは、
16:13ダンクル・オステウスの頭蓋骨と
16:15胴体の部分を再現したCGモデルです。
16:21骨を詳しく分析すると、
16:24顎がどのように働いていたのかが分かります。
16:30噛む力は、
16:32およそ4500ニュートンと推定されます。
16:34一体どの程度の力かというと、
16:39例えば、
16:40現代の動物で噛む力が強い
16:42イリエワニでは、
16:4316000ニュートン、
16:46ホホジロザメは、
16:4718000ニュートンです。
16:50比べると、
16:52ダンクル・オステウスの方が
16:53弱く見えます。
16:56しかし、
16:57イリエワニでは、
16:58噛む力が広い範囲にかかるのに対して、
17:02ダンクル・オステウスの場合、
17:03最初に噛みついたとき、
17:05力は顎の鋭い先端部分に集中したと考えられます。
17:12それは、
17:13獲物の頑丈な体を貫くのに十分だったのでしょうか。
17:19CGモデルには重要なヒントがあります。
17:23頭蓋骨の上部と下部には、
17:25大きな筋肉があり、
17:27両者が連動することで、
17:29上下の顎は大きく開いたと考えられます。
17:36そして、
17:37頬の筋肉が瞬時に収縮することで、
17:40素早く顎を閉じ、
17:42獲物を逃がさない仕組みになっていたのです。
17:45明らかにしたいのは、
17:49ダンクル・オステウスの独特な噛みつき方は、
17:52骨にどんな影響を与えたのかということです。
17:55ダンクル・オステウスの顎の力を検証する実験です先端のとがった部分のモデルを作りプレス式の機械に取り付けます今回噛むのは牛の骨です準備OKスリー
18:252、1
18:26すごい
18:32骨が割れた
18:35ええ、裂けるようにざっくりと割れましたね
18:39先端は完全に貫通しています
18:41重要なのは、顎が閉じるスピードです
18:46そこから、ダンクル・オステウスの狩りの仕方が見えてくるからです
18:51顎の骨の先端にある尖った牙のような部分が、獲物に最初の穴を開けたことがわかります
19:01そこが起点となって、顎がさらに食い込み、獲物の肉を切り裂いていったのです
19:08つまり、顎はハサミのように働いたと考えられます
19:13現代のイタチザメに似ているかもしれません
19:16獲物の体に食らいつき、大きな肉片をえぐり取るように動くのです
19:23海の捕食者たちは、多様な進化も遂げてきました
19:36ラブカというサメです
19:41水深1000メートルから、毎晩アサセに移動し、獲物を狩ります
19:47鋭いトゲのような刃を300本以上備え、一度捕らえた獲物は離しません
19:56顎の力はそれほど強くないものの、獲物を丸呑みすることができます
20:06こちらのミツクリザメは、独特な方法で、顎と歯を使って狩りをします
20:21長く突き出た糞は、獲物の発する電気的な信号を感じ取り、深海でも獲物を探知することができます
20:31狩りの際には、糞の下から顎を突き出し、一瞬で捕らえます
20:38一方、獲物となる側も、生き延びるための戦略を進化させてきました
20:59こちらはスカシダコ
21:03まるで透明なマントのように皮膚は透けています
21:10透ける皮膚のおかげで、暗い海の中で捕食者から見つかるのを逃れることができます
21:18深海に住むイカの中には、光る炭を噴射し、敵の目を攪乱する者もいます
21:26カムリクラゲは、攻撃されると発光して相手を混乱させます
21:33海の中では、防御手段を持つことこそが、生死を分ける決定的な要因なのです
21:41海の世界は、捕食する者と捕食される者との絶妙なバランスで成り立っています
21:55食物連鎖の上位にいる捕食者は、狩りの能力を高めるように
22:02一方、貝にいる者たちは捕食者から逃れるように、進化を遂げてきました
22:08中には、ほとんど姿を消すことのできる捕食者がいます
22:14ストップライト・ルース・ジョーです
22:19ストップライト・ルース・ジョー
22:21赤信号を持つ緩い顎と呼ばれるこの魚は、最も狡猾で、姿の見えにくい捕食者の一つです
22:31この流線系のハンターは、深海で狩りを行います
22:37しかし、暗闇の中でどうやって獲物を見つけるのでしょうか?
22:46その答えは、光です
22:49より正確に言えば、光の色にあります
22:53太陽の光は、虹で見られる色すべてを含んでいます
22:58しかし、光が海の中に入ると、色の強さは失われ、徐々に消えていきます
23:10色によってエネルギーのレベルが異なるため、最もエネルギーレベルの低い赤は、一番先に失われます
23:22一方、エネルギーレベルが最も高い青は、一番深くまで届きます
23:28その結果、深海では青が目立ち、赤は目立ちません
23:41海面近くでは、赤い体は非常に目立ちますが、海が深くなるほど見えなくなります
23:49深海に住む多くの生物が赤色をしているのは、その方が捕食者に見つかりにくいからなのです
24:02このことを検証するため、実験を行います
24:08深海の生物に、光はどう作用するのでしょうか?
24:12この箱には、深海の闇の世界が再現されています
24:16箱の中に赤い魚を入れ、青い光を当ててみましょう
24:22生物発光で多い青い光ですが、この場合、赤い魚は背景に溶け込み、よく見えません
24:31ところが、赤い光を当ててみると、状況は一変します
24:37魚がくっきり浮かび上がりました
24:42もし捕食者が光を当てたとすれば、非常に見つけやすい状態です
24:48ストップライトルースジョーは、この赤い光の特性を巧みに利用しています
24:54海洋学者のジェスロ・レディングは、この魚の調査を続ける研究者です
25:03この興味深い魚は、光をどうやって利用しているのでしょうか?
25:09ストップライトルースジョーは、その名の通り、赤い光を発することができます
25:13生物発光の中でも、非常に珍しい能力です
25:19赤い光は、サーチライトのような機能を果たし、海の中を移動しながら獲物を探します
25:28それで、魚や小さな甲殻類などを捕らえることができるんです
25:33光を発する機関は、どこにあるんですか?
25:34一つは腹部に、周りに溶け込むための光を出す機関があります
25:51そして、目の下に涙のような形をした発光器があり、赤い光はここから発します
25:58獲物となる多くの生き物は赤い光が届かない深海で生きているため、赤色を見る能力がなくなっています。なのでこの魚が近づいても気づきません。
26:14まるでアニメのキャラクターみたいですね。目の下から光るレーザーを出して獲物を探す。すごいでしょう。
26:23赤く発光したストップライトルースジョーは圧倒的に優位な捕食者です。暗視ゴーグルを使って暗闇で標的を狙う狙撃者のように獲物に気づかれることなく狙いを定めることができるからです。
26:46では名前のもう半分の緩い顎には何か特徴がありますか?
26:53こちらにCGモデルを作りました。
26:57これを動かしてみると顎が非常に大きいことがわかります。
27:02全身の30%を占めるほど巨大です。
27:09口は大きく開くことができます。
27:15特殊な関節の仕組みによるものです。
27:19頭の後ろに関節がもう一つあります。
27:23それによって顎の可動域が非常に大きくなっているんです。
27:28口が本当に大きく開くんですね。
27:33一つ気になるのが下顎の裏側を見ると大きな空洞になっていることです。
27:41これは欠けているんですか?皮膚や膜がない。
27:45ええ、この魚の仲間は下顎の皮膚や膜が完全に欠けているのが大きな特徴です。
27:54唯一あるのは弾力に富んだ筋肉だけでそれが顎と体をつないでいます。
28:02この構造のおかげで顎を素早く動かせるんです。
28:07わずか0.1秒で閉じることができます。
28:12しかも非常に大きな歯を持ち獲物を確実に捉えることができます。
28:18さらに重要なのは歯が透明で水中ではほとんど見えないということです。
28:25周りの海にすっかり溶け込んでしまうわけです。
28:29透明な歯とはまた特異な進化ですね。
28:33できるだけ獲物に勘付かれないよう慎重に近づいてから一気に襲うためです。
28:40なるほど。
28:43深海では食料が貴重なため、獲物を仕留める際には素早く柔軟に動く顎が極めて重要です。
28:52ストップライトルースジョーは独特な構造の顎のおかげで、驚異的な速さで口を大きく開け閉めすることができます。
29:06海の捕食者の多くは、こうした大きく開く顎を武器としています。
29:13口は大きく開けば獲物を捉えやすくなり、素早く閉じれば強い力を加えられます。
29:21手は素早く開くことはなぜ重要なのでしょう。
29:26これから実験をします。
29:28水の中にあるこのガムを魚だとしましょう。
29:32そして、この手が獲物を捉える魚の顎だとします。
29:37顎を素早く閉じてみます。
29:40果たして獲物はどうなるでしょうか。
29:44残念、逃してしまいました。
29:47顎を素早く閉じるときに水流が起こり、獲物はその水の流れに押し出されて逃げてしまったのです。
29:56逆に、口を素早く開けば、水と一緒に獲物を引き込むことができます。
30:03見てください。
30:08今はおよそ0.5秒の速さで開きました。
30:14わずか1,000分の1秒で開く魚もいます。
30:19高度に発達した口の動きはあまりにも素早いため、
30:24超スローモーションカメラでなければ観察することができません。
30:33口は一瞬で大きく開き、内部に空間を作り出します。
30:39その結果、水とともに獲物が一気に吸い込まれるのです。
30:44こうした吸引による捕食は非常に効率が良いため、
30:53小魚から巨大な捕食者まで多くの魚が行っています。
30:59太古に海へと戻った生物がいました。
31:14その生き物はどうやって海の環境に適応し、
31:18捕食者の中の捕食者とまでなったのでしょうか。
31:23現代の海の捕食者でまず思い浮かぶのはサメです。
31:27しかし、サメを捕らえて食べる、さらに恐るべき捕食者がいます。
31:36サメを捕らえて食べる、さらに恐るべき捕食者がいます。
31:40シャチです。
31:42シャチはキラーホエールとも呼ばれ、知能が高い上に狩りは効率的、しかも冷酷です。
31:55シャチはキラーホエールとも呼ばれ、知能が高い上に狩りは効率的、しかも冷酷です。
32:08獲物は単独で狙うこともあれば、群れで協力して仕留めることもあります。
32:27時にはクジラが餌食になります。
32:33シャチは魚類ではありません。
32:41長い進化の末に陸から海へと生息地を変えた哺乳類です。
32:47なぜシャチの祖先は海で暮らすようになったのでしょうか。
32:52答えの一端はここにあります。
33:04この中にあるのはプランクトンです。
33:07こちらが植物プランクトン。
33:10これが海の中で大量に増殖すると、海水は緑色になります。
33:18こうしたプランクトンが地球上で最も重要な食料源となっています。
33:24植物プランクトンを餌にするのがこれ。
33:29動物プランクトン。
33:31ごく微小な動物です。
33:34顕微鏡で見ると、動いています。
33:41小さな生き物がたくさん泳ぎ回っているのが分かりますね。
33:47動物プランクトンを魚が食べ、それをさらに大きな魚が食べることで、食物の連鎖が成り立ちます。
33:58プランクトンこそが地球上で最も活発な食物連鎖の基盤です。
34:08そしてこれこそが、陸で生活していた動物たちを再び海へ引き寄せた最大の理由です。
34:25最初に海へと戻った捕食者は、爬虫類でした。
34:30彼らは、哺乳類より何百万年も早く海の環境に適応しました。
34:39こちらはモササウルスです。
34:42ハクアキ後期に生息していました。
34:45最新の研究により、モササウルスは、海の生物の歴史上最強の捕食者の一つであったことが分かっています。
34:582022年に発見されたモササウルスは海の巨人を意味するタラソティタンと名付けられましたモササウルスは爬虫類の大きなグループで各地で化石が見つかっています。
35:24最大のものは体長17メートルもありました。
35:35モササウルスは強力な捕食者としてのあらゆる特徴を備えています。
35:41体の形は流線形、頭蓋骨は三角形でした。
35:47そのおかげで水中で素早く動くことができ、大型の獲物を攻撃するのにも適していたんです。
35:56モササウルスは今日のシャチのように生態系の頂点に立っていました。
36:05これは大型のモササウルスの顎です。
36:09この顎で海にいる巨大動物を襲っていたとみられます。
36:16歯も長くて大きい。
36:19これなら大きな獲物を攻撃する場合にも、相手の内臓にまで達するような傷を与えた可能性が高いです。
36:28そして、肉を骨から剥がし、時には骨をも噛み砕いたはずです。
36:37モササウルスの歯は現代のシャチと似ています。
36:42これはシャチの歯です。
36:45モササウルスの歯と並べてみると、非常に似ていることが分かります。
36:50どちらも根元が丈夫で、先端は太く、わずかにカーブしています。
36:57歯は動物がどのような狩りをするかを知るための重要な手がかりとなります。
37:08現代のシャチがクジラを襲って食べるように、
37:12モササウルスも他の大型動物を捕食していたとみて間違いありません。
37:19大人のモササウルスはほぼ何でも食べました。
37:23サメやウミガメ、他の巨大な爬虫類も獲物にしたでしょう。
37:30タラソティタンの化石のそばでは、別のモササウルスの頭蓋骨が見つかっています。
37:38その頭蓋骨には、タラソティタンによって噛まれた跡がありました。
37:45タラソティタンは獲物の頭部を狙って攻撃し、反撃を防いだ上で窒息させたのです。
37:57まさに捕食者を食べる捕食者でした。
38:06モササウルスの祖先はトカゲでした。
38:12陸のトカゲがどうやって海のモンスターとなったのでしょう。
38:21ガラパゴス諸島に生息するトカゲ、ウミイグアナ。
38:27長い時間をかけ、水中で生活できるように進化しました。
38:34最大で1時間、水に潜ることができます。
38:45泳ぎやすいように尾は平たく、浮力を抑えるため骨密度も高くなっています。
38:52それでもウミイグアナは水中の環境に完全に適応しているわけではありません。
39:07一方、タラソティタンとより近い関係にある現代のトカゲもいいます。
39:14コモドオオトカゲです。
39:17ではコモドオオトカゲの祖先はどのようにして海に生きる獰猛な捕食者へと進化したのでしょうか。
39:29進化生物学者のジェニファー・ホイヤル・カシル。
39:35タラソティタンとコモドオオトカゲの関係について研究を続けています。
39:42もしコモドオトカゲが海に戻るとすれば、多くの進化が必要となります。
39:51泳ぐ能力を高めるには体の構造が変わらなくてはなりません。
39:57今でも泳ぎますが。
40:00しかし、海の捕食者となるには、泳ぎ方をさらに向上させる必要があります。
40:07胴体の筋肉と骨格を発達させ、力強くくねりながら泳ぐようになり、指には水かきができるでしょう。
40:16水中を自在に動き回れるよう、ヒレも発達します。
40:21尾は長く伸びて、尾びれのように進化するでしょう。
40:28それを使って泳ぐようになります。
40:32まさにモササウルスのようにです。
40:37コモドオトカゲの嗅覚は、海中での狩りでも有利でしょう。
40:42サメが獲物を嗅ぎつけるのと同じです。
40:47鋭い嗅覚は、海に戻っても維持されるはずです。
40:58動物たちは、新たな環境に適応するため、長い時間をかけて進化を遂げてきました。
41:07陸で生活していた生き物が海へ戻った主な理由。
41:13それは、海が地球上で最も豊かな食料源だからです。
41:19やがてモササウルスが絶滅すると、別の動物が食物連鎖の頂点へと上り詰めていきました。
41:34その最新版が、現代の海における究極の捕食者、シャチなのです。
41:45海には、ずっと暮らし続ける生き物にも、再び戻ってきた生き物にも反映するチャンスがあります。
41:53広大で過酷な海は、一方で、
41:57童貌な捕食者を生むゆりかごともなってきたのです。
42:02陸上と異なり、海に大型の草食動物はほとんどいません。
42:08ほぼすべて、肉食動物が肉食動物を食べて生き抜く世界です。
42:15初期の捕食者は、強力な顎を持っていました。
42:20現在では、光を利用して獲物をおびき寄せ、仕留める魚もいます。
42:30そこは、強いものだけが生き残ることができる世界なのです。
42:41すべては、食うか食われるかです。
42:47次回は、海に生息する巨大生物を探しに行きます。
43:00深海の怪物から、地球一長寿の魚。
43:06凶暴なハンターから、神秘的なモンスターまで。
43:12海、それはいつも、私たちに未知の世界を見せてくれる、そんな場所なのです。
43:25海、それはいつも、私たちに未知の世界を見せてくれる、そんな場所なのです。
43:30海、それはいつも、私たちに未知の世界を見せてくれる、そんな場所なのです。
43:4490年前にドイツで発見されたある人骨
44:04当時男性と判断されたその骨はやがて女性と分かり
44:10しかも古代のシャーマンだった可能性が出てきました
44:13彼女が生きたのはおよそ9000年前社会でどんな役割を果たしていたのでしょうか地球ドラマチック古代ドイツ謎の女性シャーマンEテレ19日土曜夜7時です
44:28地球鉄道マレー鉄道が誇る豪華ビジネスクラスに乗車ベナン島の世界遺産ジョージタウンへなぜこれがホワイト?
44:43英雄たちの選択昭和の明け者第2回は高橋小暦雄財政はいかにして国民の幸福を実現できるのかBS14日夜9時。