20140828住民の帰還に必要な「野生動物」の対策を取材しました。 福島

  • 10 年前
福島・南相馬市は、2016年春に避難指示解除区域の解除を予定しています。
住民の帰還に必要なのは、「除染」、「インフラ整備」といわれているが、もう1つ、「野生動物」の対策が考えられます。
今、野生動物が、帰還の意志まで奪っています。

双眼鏡をのぞく男性。
その先には、20匹ほどのサルの群れがいた。
サルが目撃されたのは、南相馬市の原町区と小高区の境界近く。
南相馬市で相次ぐ、動物による被害を防ぐため、住民によるパトロールを始めた。
有害鳥獣捕獲隊の富澤広幸さんは、「サルがあれだけいたら、今は大人がほとんどだけど、小さな子どもがいたら、サルとか襲われたりする。それが一番懸念されます」と話した。
南相馬市で確認されたニホンザルは、およそ390頭と、福島第1原発事故前の3倍以上に増えている。
南相馬市原町区の吉田邦子さんは、週3回ほど避難先から自宅に戻り、野菜を作っているが、収穫直前のカボチャが被害に遭った。
吉田さんは「サルが食べていったから、枯れてしまった」と話した。
ここで野菜は作れるのか。
野生動物は、帰還したときの楽しみを奪おうとしている。
吉田さんは「帰宅に向けて、少しでも野菜を作ろうと思っていたんですけど、自給自足でやりたいのに無理だね」と話した。
さらに、原発に近い南相馬市小高区。
この日、住宅地近くで捕獲されたのは、タヌキ。
外来種のアライグマも捕獲されている。
ペットが野生化したうえ、人がいないため、繁殖が進んでいるとみられている。
南相馬市小高区に家がある渡部藤意さんは、この夏、ハクビシンの被害に遭った。
天井は茶色に染まり、穴が開いていた。
渡部さんは「ハクビシンが入って、それのふんだと思う。ハクビシンは、1カ所にふんをいっぱいためる」と話した。
天井裏の状況を確認すると、暗く、少し獣のような臭いがした。
ここに戻っても、動物のふんの下で暮らす状況となる。
渡部さんは「このままの状況で、戻ってきて、住むかって言われても、厳しいかなと」と話した。
被害を減らす手段は、今のところパトロールしかない。
夜間は人がいないため、静まり返っていて、虫の音だけしかしない。
ライトを消すと真っ暗で、夜の闇に包まれている。
住民によるパトロールは、夜も行われている。
暗闇で動いたのは、しっぽが長い動物だった。
小高区見守り隊の杉 重博さんは「パトロールよりは、猟友会による駆除ですね。その方が大事かと思います」と話した。
住民が離れた避難区域で、気ままに行動する野生動物。
帰還への意欲まで、食べつくすおそれがある。

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